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| 麻酔からさめるに従って手術の傷口が痛み出した。 「あしたの朝になれば楽になりますよ、頑張ってください。」 痛み止めの注射をして看護婦が出ていった。朝まで・・・・・・。 静かな病院の夜が更けて行く。時計を見る。七時、「まだ宵の口か」。 痛みが続く、また時計を見る、七時半。 それから長い時間が過ぎた。もう明け方かと言う望みは、11時を指す時計に無残にもくずれ去る。朝までは、まだまだ気の遠くなるような長さだ。 「痛いのは一晩だけです」と言ったお医者様の言葉が、何と空々しくひびくことか。時計の動きのもどかしさを、この時ほど切実に感じたことはなかった。「時よ、早く過ぎ去れ」私は心の中で、そう叫んでいた。 長い長い夜がようやく明けて、痛みもうすらいできた。朝日に私の顔もほころんできた。 月日の流れの早さを嘆く人が少なくない。詩にも、歌にも、この嘆きが少なからず詠まれている この人たちは幸せに過ごしてきたに違いない。いわば幸せ人の嘆きと言えよう。 病める人や苦しむ人にとっては、月日の疾く過ぎ去ることは、嘆きではなく救いだ。 月日は疾く言ってしまう(無常迅速)とは、それは嘆きの言葉ではなく、苦しむ人への慰め、励ましの言葉に違いない。 |